合わせ鏡の虚無 魔女と鏡の裏、あるいは表 02

 右手は妙な方向に折れ曲がり、全身を傷と血に覆われた少年は、魔女の言葉にしなやかな眉をひっそりとしかめた。
「け、いやく……?」
「そうだ。これは契約。力をあげる代わりに、私の願いを一つだけ叶えてもらう。契約すれば、お前は人の世に生きながら、人とは違うことわりの中で生きることになる。異なる摂理、異なる時間、異なる命。……王の力はお前を孤独にする。その覚悟が、あるのなら――」
「ある……!」
 歌うように流暢な魔女の言葉をさえぎって、少年は強い調子で言った。
「僕は、るるー、しゅを……まもっ、て、みせ、る……!だ、から、むすぶぞ、そのけいやく……!」
 今にも意識を失いそうになりながらも、少年は気丈な様子で魔女を睨みつける。
 それを受けて、魔女はふっと柔らかく微笑んだ。
「なら、契約成立だ」
 
 そして少年は、その日その場所でその瞬間、ギアスと言う名の力を得た。
 それと同時に、少年はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの双子の片割れであった存在とは違うものとなった。双子の絆は、その時点で断たれた。
 一人目のゼロが、生まれた日だった。

●完結●


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